2026年9月20日日曜日

【萬葉集06 0948・0949】

06 0948 四年丁卯春正月勅諸王諸臣子等散禁於授刀寮時作歌一首[四年丁卯の春正月、諸の王・諸の臣子等に勅して、授刀寮(たちはきのりょう)に散禁(さんきん)せしめし時に、作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕  

 「神亀4年(727年)正月、侍従侍衛の任を怠けた官人を授刀寮に散禁した」という。

 06 0948 真葛延(まくずはふ)春日之山者(かすがのやまは)打靡(うちなびく)春去徃跡(はるさりゆくと)山上丹(やまのへに)霞田名引(かすみたなびく)高圓尓(たかまとに)鸎鳴沼(うぐひすなきぬ)物部乃(もののふの)八十友能壮者(やそとものをは)折木四哭之(かりがねの)来継比日(きつぐこのころ)如此續(かくつぎて)常丹有脊者(つねにありせば)友名目而(ともなめて)遊物尾(あそばましものを)馬名目而(うまなめて)徃益里乎(ゆかましさとを)待難丹(まちがてに)吾為春乎(わがするはるを)决巻毛(かけまくも)綾尓恐(あやにかしこし)言巻毛(いはまくも)湯〃敷有跡(ゆゆしくあらむと)豫(あらかじめ)兼而知者(かねてしりせば)千鳥鳴(ちどりなく)其佐保川丹(そのさほがはに)石二生(いはにおふる)菅根取而(すがのねとりて)之努布草(しのふくさ)解除而益乎(はらへてましを)徃水丹(ゆくみづに)潔而益乎(みそぎてましを)天皇之(おほきみの)御命恐(みことかしこみ)百礒城之(ももしきの)大宮人之(おほみやひとの)玉桙之(たまほこの)道毛不出(みちにもいでず)戀比日(こふるこのころ)

 かけ-ま-く-も:心にかけて思うことも。言葉に出して言うことも。 
いは-ま-く-も 【言はまくも】:口に出して言うのも。 
由々しき一大事だ 二十句目(ゆゆしくあらむと)は、(ゆゆしからむと) 
 二十九句目(いはにおふる)は、(いはにおふ)
 しのふ 【偲ふ】(上代語):思い慕う。
「まさに、後悔先に立たず」なんだよなぁ。

 06 0949 反歌一首
 06 0949 梅柳(うめやなぎ)過良久惜(すぐらくをしみ)佐保乃内尓(さほのうちに)遊事乎(あそびしことを)宮動〃尓(みやもとどろに) 

 『乃』の字には少なくとも、乃(ノ)・ 乃(ナイ)・ 乃(ダイ)・ 乃(アイ)・ 乃(の)・ 乃(なんじ)・ 乃ち(すなわちの7種の読み方が存在する。
 『内』の字には少なくとも、内(ノウ)・・ 内(ドウ)・ 内(ダイ)・ 内(ゼイ)・ 内(うち)・ 内る(いる)の7種の読み方が存在する。
 乃(ナイ)+ 内(ナイ)=(ない) 
三句目(さほのうちに)は、(さほないに) 
『比』の字には少なくとも、比(ビチ)・ 比(ビ)・ 比(ヒツ)・ 比(ヒ)・ 比ぶ(ならぶ)・ 比(たぐい)・ 比(ころ)・ 比べる(くらべる)の8種の読み方が存在する。 
『動』の字には少なくとも、動ドウ・ 動トウ・ 動ズ・ 動もすればややもすれば・ 動くうごく・ 動かすうごかすの6種だが、とどろ(に・と) 【轟(に・と)】は、[どうどう。ごうごう。▽大きな音が鳴り響くさま]で、「動〃」を義訓とした。

 06 0949 右神龜四年正月 數王子及諸臣子等 集於春日野而作打毬之樂 其日忽天陰雨雷電 此時宮中無侍従及侍衛 勅行刑罰皆散禁於授刀寮而妄不得出道路 于時悒憤即作斯歌[右は、神亀四年の正月に数の王子また諸の臣子等の春日野に集ひて、打毬の楽を作す。 その日忽ちに天雲り雨ふり雷なり電す。この時に宮の中に侍従と侍衛と無し。勅して刑罰に行ひ、皆授刀寮に散禁して妄りて道路に出づることを得ずあらしむ。時に悒憤(ゆうふん)し、即ちこの歌を作れり]作者未詳

2026年9月13日日曜日

【萬葉集06 0946・0947】

06 0946 過敏馬浦時山部宿祢赤人作歌一首[敏馬の浦を過ぎし時に、山部宿祢赤人の作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕 
 06 0946 御食向(みけむかふ)淡路乃嶋二(あはぢのしまに)直向(ただむかふ)三犬女乃浦能(みぬめのうらの)奥部庭(おきへには)深海松採(ふかみるとる)浦廻庭(うらみには)名告藻苅(なのりそかる)深見流乃(ふかみるの)見巻欲跡(みまくほしけど)莫告藻之(なのりその)己名惜三(おのがなをしみ)間使裳(まづかひも)不遣而吾者(やらずてわれは)生友奈重二(いけりともなし) 

 みけむかふ【御食向かふ】:「淡路(あはぢ)」「城上(きのへ)」「南淵(みなぶち)」「味原(あぢふ)」などの地名にかかる枕詞。 
 【故地名】敏馬の浦(みぬめのうら):兵庫県神戸市 
 おき-へ 【沖方・沖辺】:沖の方。沖の辺り。 
 ふか-みる 【深海松】:海底深く生えている海松(みる)(=海藻の一種)。
 六句目(ふかみるとる)は、(ふかみるをとる)
 うら-み 【浦廻・浦回】:入り江。海岸の曲がりくねって入り組んだ所。「うらわ」とも。
 なのりそ:海藻のほんだわらの古名。正月の飾りや、食用・肥料とする。 
『藻』の字には少なくとも、藻(ソウ)・ 藻(も)・ 藻(あや)の3種の読み方が存在する。 八句目(なのりそかる)は、(なのりそをかる)
 み-まく-ほ・し 【見まく欲し】:見たい。会いたい。
(ふか-みる)(なのりそ)と歌いこんでの、前哨戦である」

そしてやっと本音を歌いだすのだ。
 ま-づかひ 【間使ひ】:消息などを伝えるために、人と人との間を行き来する使者。
 いけ【生】 り ともなし:生きているとも感じられない。生きているように思われない。
「告白せずして、何の生きがいがあろう」というわけよ。

 06 0947 反歌一首
 06 0947 為間乃海人之(すまのあまの)塩焼衣乃(しほやききぬの)奈礼名者香(なれなばか)一日母君乎(ひとひもきみを)忘而将念(わすれておもは)

 為:[音]イ(呉・漢)[訓]読み: ため、な-す、な-る、す-る (活用系:「し」「せ」「さ」)、つく-る、おさ-める[をさむ] 
『乃』の字には少なくとも、乃(ノ)・ 乃(ナイ)・ 乃(ダイ)・ 乃(アイ)・ 乃(の)・ 乃(なんじ)・ 乃ち(すなわち)の7種の読み方が存在する。
 海人 (あま):あまの漢字表記。 
乃(アイ)+海人 (あま)=(あま)
 一句目(すまのあまの)は、(すまあまの)でもいいのだけれど、ここは(しまあまの) 『礼』の字には少なくとも、礼(レイ)・ 礼(リ)・ 礼(ライ)・ 礼(のり)・ 礼う(うやまう)の5種の読み方が存在する。 
なり-な・る 【成り成る】:しだいに出来上がる。
 『者』の字には少なくとも、者(シャ)・ 者(もの)の2種の読み方が存在する。 
三句目(なれなばか)は、(なりなしか) 
 『而』の字には少なくとも、而(ノウ)・ 而(ニ)・ 而(ドウ)・ 而(ジ)・ 而(なんじ)・ 而れども(しかれども)・ 而るに(しかるに)・ 而も(しかも)・ 而して(しかして)の9種の読み方が存在する。 
『将』の字には少なくとも、将(ソウ)・ 将(ショウ)・ 将に…す(まさに…す)・ 将いる(ひきいる)・ 将(はた)の5種の読み方が存在するけれど、(うける)もあるという。
 『念』の字には少なくとも、念(ネン)・ 念(デン)・ 念う(おもう)の3種の読み方が存在する。
 将レ念→念う(おもう)+将(うける)=(おもう)
 五句目(わすれておもは)は、(わすれじおもふ) 

 しまあまの しほやききぬの なりなしか ひとひもきみを わすれじおもふ 

 06 0947 右作歌年月未詳也 但以類故載於此次[右は、作歌の年月いまだ詳らかならず。ただ、類をもちての故に、この次に載す]

2026年9月6日日曜日

【萬葉集06 0942・0943・0944・0945】

06 0942 過辛荷嶋時山部宿祢赤人作歌一首[辛荷の島を過ぎし時に、山部宿祢赤人の作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕 
 06 0942 味澤相(あぢさはふ)妹目不數見而(いもがめかれて)敷細乃(しきたへの)枕毛不巻(まくらもまかず)櫻皮纒(かにはまき)作流舟二(つくれるふねに)真梶貫(まかぢぬき)吾榜来者(わがこぎくれば)淡路乃(あはぢの)野嶋毛過(のしまもすぎ)伊奈美嬬(いなみつま)辛荷乃嶋之(からにのしまの)嶋際従(しまのまゆ)吾宅乎見者(わぎへをみれば)青山乃(あをやまの)曽許十方不見(そこともみえず)白雲毛(しらくもも)千重尓成来沼(ちへになりきぬ)許伎多武流(こぎたむる)浦乃盡(うらのことごと)徃隠(ゆきかくる)嶋乃埼〃(しまのさきざき)隈毛不置(くまもおかず)憶曽吾来(おもひぞあがくる)客乃氣長弥(たびのけながみ) 

 あぢさはふ【味沢相・味澤相】:あぢ(鴨の名)と呼ばれた渡り鳥が沢に滞在し、夜も昼も構わず鳴き続けるさま。 泣き続ける。 
 め-かれ 【目離れ】:目が離れること。会わないでいること。疎遠になること。
 五句目(かにはまき)は、(おうひまき)
真楫繁貫(まかじじぬ・く):船に左右そろった櫂かいをたくさん取り付ける。
九句目(あはぢの)は、(あはみちの)
 つま 【端】:はし。へり。
 【故地名】辛荷の島(からにのしま):兵庫県揖保郡御津町室津地ノ唐荷島・中ノ唐荷島・沖ノ唐荷島。 
 くま【隈、暈】:隠れたところ。奥まったところ。 
ふち【淵・渕・渊・潭】:脱出し難い厳しい境遇。
 二十三句目(くまもおかず)は、(くまもふち
 二十四句目(おもひぞあがくる)は、(おもひぞあがく) 
 かく【斯く】:かように、このように、こうして。
 け-なが・し 【日長し】:日数が長くたっている。
 二十五句目(たびのけながみ)は、(かくのけながみ)

 06 0943 反歌三首 06 0943 玉藻苅(たまもかる)辛荷乃嶋尓(からにのしまに)嶋廻為流(しまみする)水烏二四毛有哉(うにしもあれや)家不念有六(いへおもはざらむ)

 う 【鵜】:水鳥の名。鵜飼いに使わ)れる。[季語] 夏。 
『家』の字には少なくとも、家(コ)・ 家(ケ)・ 家(カ)・ 家(や)・ 家(うち)・ 家(いえ)の6種の読み方が存在する。
 五句目(いへおもはざらむ)は、(けおもはざらむ

 06 0944 嶋隠(しまがくり)吾榜来者(わがこぎくれば)乏毳(ともしかも)倭邊上(やまとへのぼる)真熊野之船(まくまののふね)

 『毳』の字には少なくとも、毳(ゼイ)・ 毳(セツ)・ 毳(セチ)・ 毳(セイ)・ 毳(セ)・ 毳(ケチ)・ 毳(カツ)・ 毳らかい(やわらかい)・ 毳(むくげ)・ 毳(にこげ)・ 毳(そり)・ 毳(けば)の12種の読み方が存在する。
 三句目(ともしかも)は、(ともにこげ) 

しまがくり わがこぎくれば ともにこげ やまとへのぼる まくまののふね

 06 0945 風吹者(かぜふけば)浪可将立跡(なみかたたむと)伺候尓(さもらひに)都太乃細江尓(つだのほそえに)浦隠居(うらがくりをり) 

 【故地名】都太の細江(つだのほそえ):兵庫県姫路市
 さ-もら・ふ 【候ふ・侍ふ】:ようすを見ながら機会をうかがう。見守る。

2026年8月30日日曜日

【萬葉集06 0938・0939・0940・0941】

06 0938 山部宿祢赤人作歌一首[山部宿祢赤人の作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕 
 06 0938 八隅知之(やすみしし)吾大王乃(わごおほきみの)神随(かむながら)高所知流(たかしらせる)稲見野能(いなみのの)大海乃原笶(おほうみのはらの)荒妙(あらたへの)藤井乃浦尓(ふぢゐのうらに)鮪釣等(しびつると)海人船散動(あまぶねさわく)塩焼等(しほやくと)人曽左波尓有(ひとぞさはにある)浦乎吉美(うらをよみ)宇倍毛釣者為(うべもつりはす)濱乎吉美(はまをよみ)諾毛塩焼(うべもしほやく)蟻徃来(ありがよひ)御覧母知師(めさくもしるし)清白濱(きよきしらはま)

 たか-し・る 【高知る】:立派に治める。
 四句目(たかしらせる)は、(たかしらしめる) 
【故地名】印南野(いなみの):兵庫県印南の地一帯の丘陵性の原野。 
【故地名】大海の原(おおみのはら):兵庫県明石市市魚住町から東方の丘陵にわたる一帯の地。同市二見町東二見小字大見はその遺称か。聖武天皇の神亀3年10月の『続紀』の行幸記事に「至二印南野邑美頓宮一」とある。 
六句目(おほうみのはらの)は(おほみのはらの)
 【故地名】藤井の浦(ふじいのうら):兵庫県明石市藤江の浦のこと。→藤江の浦 
さ-は 【然は】:そうは。そのようには。 
『有』の字には少なくとも、有(ユウ)・ 有(ウ)・ 有つ(もつ)・ 有る(ある)の4種の読み方が存在する。
 十二句目(ひとぞさはにある)は、(ひとぞさはにも)
 徃:[音] オウ(呉・漢)[訓]い-く、いにしえ、さき-に、ゆ-く、みち
 十七句目(ありがよひ)は、(ありゆきき)
 『御』の字には少なくとも、御(ゴ)・ 御(ゲ)・ 御(ギョ)・ 御(ガ)・ 御(み)・ 御(おん)・ 御める(おさめる)・ 御(お)の8種の読み方が存在する。 
『覧』の字には少なくとも、覧(ラン)・ 覧る(みる)の2種の読み方が存在する。 御(み)+覧る(みる)=(みる) 
『母』の字には少なくとも、母(モ)・ 母(ム)・ 母(ボウ)・ 母(ボ)・ 母(はは)の5種の読み方が存在する。
 十八句目(さくもしるし)は、(みるもしらしめ

 06 0939 反歌三首 
06 0939 奥浪(おきつなみ)邊波安美(へなみしづけみ)射去為登(いざりすと)藤江乃浦尓(ふぢえのうらに)船曽動流 (ふねぞさわける)

 へ-なみ 【辺波】:岸に寄せる波。船べりに寄せる波。[反対語] 沖つ波。
 いざり 【漁り】:漁をすること。

 06 0940 不欲見野乃(いなみのの)淺茅押靡(あさぢおしなべ)左宿夜之(さぬるよの)氣長在者(けながくしあれば)家之小篠生(いへししのはゆ) 

 不欲は「欲せざる」で、「いな」の義訓 
おし-な・ぶ【押し靡ぶ】:押しなびかせる。
「おしなむ」とも。
 さ-・ぬ 【さ寝】:寝る。
 け-なが・し 【日長し】:日数が長くたっている。

 06 0941 明方(あかしがた)潮干乃道乎(しほひのみちを)従明日者(あすよりは)下咲異六(したゑましけむ)家近附者(いへちかづけば)

した-ゑま・し 【下笑まし】:心の中でうれしく思う

2026年8月23日日曜日

【萬葉集06 0935・0936・0937】

06 0935 三年丙寅秋九月十五日幸於播磨國印南野時笠朝臣金村作歌一首[三年丙寅の秋九月十五日、播磨国の印南野に幸しし時に、笠朝臣金村の作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕
 06 0935 名寸隅乃(なきすみの)船瀬従所見(ふなせゆみゆる)淡路嶋(あはぢしま)松帆乃浦尓(まつほのうらに)朝名藝尓(あさなぎに)玉藻苅管(たまもかりつつ)暮菜寸二(ゆふなぎに)藻塩焼乍(もしほやきつつ)海未通女(あまをとめ)有跡者雖聞(ありとはきけど)見尓将去(みにゆかむ)餘四能無者(よしのなければ)大夫之(ますらをの)情者梨荷(こころはなしに)手弱女乃(たわやめの)念多和美手(おもひたわみて)俳佪(たもとほり)吾者衣戀流(あれはぞこふる)船梶雄名三(ふねかぢをなみ) 

 【故地名】名寸隅(なきすみ):兵庫県明石市魚住町・大久保町一帯の地。 
ふな‐せ【船瀬】:船が風波を避けるために停泊する所。 
松帆の浦:今の兵庫県の淡路島の北端にある海辺で、明石海峡をはさんで須磨・明石の地をのぞむ。
 あま-をとめ 【海人少女】:海で働く少女。 
よし‐な・い【由無い】: そうするいわれがない。理由がない。
 こころなし【心無し】:思慮、おもいやりがないこと。 
おもひ-たわ・む 【思ひ撓む】:気持ちがくじける。 
た-もとほ・る 【徘徊る】:行ったり来たりする。歩き回る。 
まるで、♪潮風を待つ少女♪(安達明)を歌ってるようだ。 

 06 0936 反歌二首 
06 0936 玉藻苅(たまもかる)海未通女等(あまをとめども)見尓将去(みにゆかむ)船梶毛欲得(ふねかぢもがも)浪高友(なみたかくとも) 

 さぞかし、「噂にたがわぬ少女たちがいるんだろうなぁ?」という思いが高まる。

 06 0937 徃廻(ゆきめぐり)雖見将飽八(みともあかめや)名寸隅乃(なきすみの)船瀬之濱尓(ふなせのはまに)四寸流思良名美(しきるしらなみ)

 しきる【頻る】:何度も起こる。度重なる。 
「今や、夢と憧れになってしまったけれど、この波を乗り越えてきっと船出するぞ」という決意がうかがえる。

2026年8月16日日曜日

【萬葉集06 0933・0934】

06 0933 山部宿祢赤人作歌一首[山部宿祢赤人の作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕 
06 0933 天地之(あめつちの)遠我如(とほきがごとく)日月之(ひつきの)長我如(ながきがごとく)臨照(おしてる)難波乃宮尓(なにはのみやに)和期大王(わごおほきみ)國所知良之(くにしらすらし)御食都國(みけつくに)日之御調等(ひのみつきと)淡路乃(あはぢの)野嶋之海子乃(のしまのあまの)海底(わたのそこ)奥津伊久利二(おきついくりに)鰒珠(あはびたま)左盤尓潜出(さはにかづきで)船並而(ふねなめて)仕奉之(つかへまつるし)貴見礼者(たふとしみれば)

 三句目(ひつきの)は、(じつげつの)
 じつ-げつ 【日月】:月日(つきひ)。歳月。 
五句目(おしてる)は、(のぞみてる
 のぞ・む 【望む】:遠くから眺めやる。
 『大』の字には少なくとも、大(ダイ)・ 大(ダ)・ 大(タイ)・ 大(タ)・ 大きい(おおきい)・ 大いに(おおいに)・ 大(おお)の7種の読み方が存在する。 
『王』の字には少なくとも、王(オウ)・ 王(きみ)の2種の読み方が存在する。
 大(おお)+王(オウ)=(おう)
七句目(わごおほきみ)は、(わごおうの) 

 『等』の字には少なくとも、等(トウ)・ 等(タイ)・ 等(ら)・ 等しい(ひとしい)・ 等(など)の5種の読み方が存在する。
ひ【日】 の 調(みつき):調を貢納する形の一つ。古く、日ごとに天皇供御料(くごりょう)として朝廷にたてまつっていたみつぎもの。
和泉・紀伊・淡路・近江・若狭の五か国が、日を分担して、食料品を献上していた。
十句目(ひのみつきと)は、(ひのみつきとう)
『乃』の字には少なくとも、乃(ノ)・ 乃(ナイ)・ 乃(ダイ)・ 乃(アイ)・ 乃(の)・ 乃(なんじ)・ 乃ち(すなわち)の7種の読み方が存在する。
 十一句目(あはぢの)は、(あはぢなる
 海:[音]カイ(呉・漢)ハイ(唐)[訓]あま、うみ(表内)わた 
 さは-に 【多に】:たくさん。 
 かづ・く 【潜く】:水中にもぐる。
『之』の字には少なくとも、之(シ)・ 之く(ゆく)・ 之(の)・ 之(これ)・ 之(の)このの5種の読み方が存在する。

あめつちの とほきがごとく じつげつの ながきがごとく のぞみてる なにはのみやに わごおうの くにしらすらし みけつくに ひのみつきとう あはぢなる のしまのあまの わたのそこ おきついくりに あはびたま さはにかづきて ふねなめて つかまつりし たふとしみれば 

 06 0934 反歌一首 
06 0934 朝名寸二(あさなぎに)梶音所聞(かぢのおときこゆ)三食津國(みけつくに)野嶋乃海子乃(のしまのあまの)船二四有良信(ふねにしあるらし) 

 『音』の字には少なくとも、音(オン)・ 音(イン)・ 音(ね)・ 音り(たより)・ 音(おと)の5種の読み方が存在する。 
『所』の字には少なくとも、所(ソ)・ 所(ショ)・ 所(ところ)の3種の読み方が存在する。 
音(おと)+ 所(ところ)=(おと)
 二句目は(かぢのおときこゆ)でなく、(かぢのおときく


2026年8月9日日曜日

【萬葉集06 0931・0932】

06 0931 車持朝臣千年作歌一首[車持朝臣千年の作れる歌一首]并短歌〔并せて短歌〕  
06 0931 鯨魚取(いさなとり)濱邊乎清三(はまへをきよみ)打靡(うちなびき)生玉藻尓(おふるたまもに)朝名寸二(あさなぎに)千重浪縁(ちへなみよる)夕菜寸二(ゆふなぎに)五百重波因(いほへなみよる)邊津浪之(へつなみの)益敷布尓(いやしくしくに)月二異二(つきにけに)日日雖見(ひにひにみとも)今耳二(いまのみに)秋足目八方(あきだらめやも)四良名美乃(しらなみの)五十開廻有(いさきめぐれる)住吉能濱(すみのえのはま)

 いさな-とり 【鯨取り】:いさな(=くじら)を捕る所の意から、「海」「浜」などにかかる。 
「えびす(蛭子、戎、恵比寿など)は外来の神としての性格を持ち、外洋から訪れる鯨にえびすの神格が重ねられる」
 ちへ-なみ 【千重波・千重浪】:幾重にも重なって寄せる波。 
よ・る 【寄る・依る】:近づく。近寄る。接近する。 
六句目(ちへなみよる)は、(ちへなみよせる

 へつなみ【辺つ波】:岸辺に打うち寄せる波。 
『益』の字には少なくとも、益(ヤク)・ 益(エキ)・ 益(イツ)・ 益(イチ)・ 益(ますます)・ 益す(ます)の6種の読み方が存在する。
 『敷』の字には少なくとも、敷(フ)・ 敷く(しく)の2種の読み方が存在する。 
『布』の字には少なくとも、布(ホ)・ 布(フ)・ 布(ぬの)・ 布く(しく)の4種の読み方が存在する。
 【飽(き)足る・慊る】:〔古くは「あきだる」。多く下に打ち消しの語を伴う〕十分に満足する。あきたりる
 いさき‐めぐ・る【いさき廻】: ( 「い」は接頭語 ) 波がしらが白く砕けて、岸べ一帯に打ち寄せる。いさく。
神の出入り口である住吉をたたえた歌で、【今耳二】から【住吉能濱】が如実に語っているけれど、さらなる繁栄を願っている。

 06 0932 反歌一首 
06 0932 白浪之(しらなみの)千重来縁流(ちへにきよする)住吉能(すみのえの)岸乃黄土粉(きしのはにふに)二寶比天由香名(にほひてゆかな)

 はに-ふ 【埴生】:「埴(はに)」のある土地。きめの細かい黄赤色の粘土 
にほひ【匂ひ】:美しい色合。