06 0946 御食向(みけむかふ)淡路乃嶋二(あはぢのしまに)直向(ただむかふ)三犬女乃浦能(みぬめのうらの)奥部庭(おきへには)深海松採(ふかみるとる)浦廻庭(うらみには)名告藻苅(なのりそかる)深見流乃(ふかみるの)見巻欲跡(みまくほしけど)莫告藻之(なのりその)己名惜三(おのがなをしみ)間使裳(まづかひも)不遣而吾者(やらずてわれは)生友奈重二(いけりともなし)
みけむかふ【御食向かふ】:「淡路(あはぢ)」「城上(きのへ)」「南淵(みなぶち)」「味原(あぢふ)」などの地名にかかる枕詞。
【故地名】敏馬の浦(みぬめのうら):兵庫県神戸市
おき-へ 【沖方・沖辺】:沖の方。沖の辺り。
ふか-みる 【深海松】:海底深く生えている海松(みる)(=海藻の一種)。
六句目(ふかみるとる)は、(ふかみるをとる)
うら-み 【浦廻・浦回】:入り江。海岸の曲がりくねって入り組んだ所。「うらわ」とも。
なのりそ:海藻のほんだわらの古名。正月の飾りや、食用・肥料とする。
『藻』の字には少なくとも、藻(ソウ)・ 藻(も)・ 藻(あや)の3種の読み方が存在する。
八句目(なのりそかる)は、(なのりそをかる)
み-まく-ほ・し 【見まく欲し】:見たい。会いたい。
「(ふか-みる)(なのりそ)と歌いこんでの、前哨戦である」
そしてやっと本音を歌いだすのだ。
ま-づかひ 【間使ひ】:消息などを伝えるために、人と人との間を行き来する使者。
いけ【生】 り ともなし:生きているとも感じられない。生きているように思われない。
「告白せずして、何の生きがいがあろう」というわけよ。
06 0947 反歌一首
06 0947 為間乃海人之(すまのあまの)塩焼衣乃(しほやききぬの)奈礼名者香(なれなばか)一日母君乎(ひとひもきみを)忘而将念(わすれておもは)
為:[音]イ(呉・漢)[訓]読み: ため、な-す、な-る、す-る (活用系:「し」「せ」「さ」)、つく-る、おさ-める[をさむ]
『乃』の字には少なくとも、乃(ノ)・ 乃(ナイ)・ 乃(ダイ)・ 乃(アイ)・ 乃(の)・ 乃(なんじ)・ 乃ち(すなわち)の7種の読み方が存在する。
海人 (あま):あまの漢字表記。
乃(アイ)+海人 (あま)=(あま)
一句目(すまのあまの)は、(すまあまの)でもいいのだけれど、ここは(しまあまの)
『礼』の字には少なくとも、礼(レイ)・ 礼(リ)・ 礼(ライ)・ 礼(のり)・ 礼う(うやまう)の5種の読み方が存在する。
なり-な・る 【成り成る】:しだいに出来上がる。
『者』の字には少なくとも、者(シャ)・ 者(もの)の2種の読み方が存在する。
三句目(なれなばか)は、(なりなしか)
『而』の字には少なくとも、而(ノウ)・ 而(ニ)・ 而(ドウ)・ 而(ジ)・ 而(なんじ)・ 而れども(しかれども)・ 而るに(しかるに)・ 而も(しかも)・ 而して(しかして)の9種の読み方が存在する。
『将』の字には少なくとも、将(ソウ)・ 将(ショウ)・ 将に…す(まさに…す)・ 将いる(ひきいる)・ 将(はた)の5種の読み方が存在するけれど、(うける)もあるという。
『念』の字には少なくとも、念(ネン)・ 念(デン)・ 念う(おもう)の3種の読み方が存在する。
将レ念→念う(おもう)+将(うける)=(おもう)
五句目(わすれておもは)は、(わすれじおもふ)
しまあまの しほやききぬの なりなしか ひとひもきみを わすれじおもふ
06 0947 右作歌年月未詳也 但以類故載於此次[右は、作歌の年月いまだ詳らかならず。ただ、類をもちての故に、この次に載す]